出雲の開業医「生活密着医療がモットーです」

  • ブログの紹介
     地域医療 = 生活密着医療と考え、「地域の方々の生活に貢献できる医療の進化を推進する」がモットーの開業医が、診療、研究、IT事業に奮闘する日々を出雲の地から綴ります。
  • 著者プロフィール
    杉浦弘明(すぎうら ひろあき) 1965年生まれ。1991年島根医大卒。島根県出雲市に「すぎうら医院」を設立して15年目の開業医。日常診療の傍ら、研究・IT事業など多方面で活躍中、後世に残る英語論文にも挑戦している。

メッセージ

2013年、3つの目標

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あけましておめでとうございます。

巳年にちなんだこの写真は島根県の誇る伝統芸能、石見神楽の大蛇です。この神楽団は大田市にある「土江子ども神楽団」(http://tsuchie-kagura.jp/)により、今年の1月3日に上演されたものです。

朝永振一郎博士がノーベル物理学賞を受賞された昭和40年に私は生まれました。巳年の年男である今年の私の目標は、1)島根でしかできないことをする、2)より公平な職務を遂行する、3)仕組みや人材を育む―。この3点です

■島根でしかできないことをする
 
島根でしかできないこととは、伝統と自然を楽しむことです。島根県西部の石見地方は神楽が盛んです。神楽は速い調子の舞で、勧善懲悪の分かりやすい題材が多く、石見地方の住民は子供の時から神楽に大変親しんでいます。 各家庭のカレンダーも神楽社中のもののことも多く伝統芸能が暮らしの一部になっているのは島根の良さだと思います。私の次男も昨年から石見神楽が大変気に入り、毎日、烏帽子・袴・足袋の装いで、見よう見まねで踊ってくれます。

そして、市街地から車で30分も移動すれば、海や山に到着できるロケーションの良さも島根の特徴です。私は昨年から長男と空いた時間によく釣りに行くようになりました。スキー場やスケート施設へのアクセスもよく、移動時間込みで3時間あれば十分に遊べて、なおかつ人ごみは全くありません。

■公平な職務と重症な方への配慮
 
平時の中、突然訪れる人生の窮地。錯綜する事態の中で、自力では瞬間的には打破できないという状況を幾度か経験し、いつも妻、家族、仲間、専門家に助けられてきました。本当にありがたい気持ちでいっぱいです。

診療所における通常の診察でも時として、緊急疾患や悪性度の高い疾患が明らかになることがあります。この時、患者さんやご家族への十分な配慮が必要だと思います。

どのような症例でも、例えそれが軽い感冒でも重篤な病気でも、職業人としてすべての患者さんに対して公平な業務遂行が必要です。一方で、支援の重要度が高い方には優先的に資源を投入する必要もあり、このバランスがなかなか難しいです。

■仕組みや人材を育む
 
人材育成については、昨年から私が学校医を担当している出雲市立今市小学校の児童を対象とした「ハッピーアスリーツ」の活動を通して実現していきたいと考えています。これは子どもたちにさまざまなスポーツを経験してもらう取り組みで(詳細は前回ブログhttp://jmedj2.com/archives/54318177.html)、先日はスケートを皆で楽しんできました。1時間ですがスケート場全館貸し切りで、アイスホッケー防具を付けて、専門のコーチに教えていただきました。子供の習得能力は素晴らしく、上手な子はたった1時間でもアイスホッケーのゲームを楽しむまでになりました。子供たちには多くのスポーツを本格的に体験してもらって、是非健康に育ってもらいたいと願います

子供の教育を「将来の人材育成」と考えると、夢があってとても楽しいですよ。
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仕組みづくりに関しては、この1月から島根県全県の医療ネットワーク「まめネット」が稼働しました。私はこのネットワークの運営を担当しています。今後のブログで詳細をお知らせする予定ですが、スタート(発芽)したばかりの「まめネット」を、是非多くの医療関係者に利用していただき、患者さんのために役立つよう育てたい(生育)と思います。
 
そして当院では4月から本格的に在宅医療に取り組みます。これまで通院していただいた患者さんがお年を召されて通院困難になられたり、あるいは悪性腫瘍等で在宅療養を余儀なくされた方のご要望に応えたものです。高校、大学の後輩である若手の先生が在宅診療を担ってくれます。交替で24時間365日体制となりますが、私も共に頑張りたいと思います。

開業医の「診療」「研究」「IT」

はじめまして。杉浦弘明と申します。

 父、妻とともに島根県出雲市に「すぎうら医院」を設立し今年で15年目です。循環器科、内科、小児科を担当しています。
 
 私は生まれ育った出雲市にある、島根医大 (現 島根大医学部)を卒業しました。卒後研修は大阪医大第3内科で循環器内科医として過ごし、大阪府三島救命センターで救急医療に携わりました。
 この時、非常に優秀な先生方の指導を受けたことが、日々の臨床の大きな支えとなっています。とりわけ故弘田雄三先生の御恩は生涯忘れえぬものです。
 
 私の担当する循環器内科では、高血圧、脂質異常症、冠動脈疾患の内服治療が主たるものです。一般開業医として非専門分野の患者さんの相談を受けることが多々あります。母校の島根大学医学部付属病院、島根県立中央病院、地域の開業医の先生に助けていただき、そして何より患者さんに学ばせていただきながら何とか日常の診療の職責を果たしています。
 このように臨床医として、また診療所経営者として、希望通りの医療を実践できることについて、地域の皆様、個性的でかつ素晴らしい従業員、そして私の家族に日々感謝しています。


 このたび、日本医事新報社からブログの連載を私に仰せつかったのは、微力ながら、研究と事業にかかわっている点をご評価いただいたからだと思います。



 一つ目は、国立感染症研究所感染症情報センター、大日康史先生との研究事業です。

 当院は感染症患者さんが比較的多く来院されることから、ご縁があり、大日先生の研究事業の実証実験の場として研究班に参加する機会を7年前にいただきました。

 圧倒的な仕事量を猛烈なスピードでこなされる大日先生のお仕事ぶりに多大な影響を受けました。
 同センターと出雲医師会の共同事業として2007年に「学校欠席者サーベイランス」を開発しました。開発当初は出雲の3つの小中学校で開発したシステムが、現在では全国の1万4000校の学校で毎日運用され、行政機関や学校医の元にリアルタイムの学校感染症情報を提供しています。
 その他には島根県立中央病院、島根大学医学部付属病院、8医療機関の電子カルテをつなぎ、出雲市における感染症患者の毎日の動態を把握する「外来症候群サーベイランス」の運用も行っております。



 二つ目は、大学院生としての研究生活です。

 大日先生との研究事業の参加を通して研究と論文作成に興味をもちました。また大阪府三島救命センター在職時に、当時の森田大所長 (現 大阪医大救急医療部教授)に論文を書くように叱咤激励されながら果たせなかったこともずっと気がかりでした。

 グローバルな視野と多くの方に慕われる今村知明教授がいらっしゃる奈良県立医大大学院の健康政策医学講座に入学を許され、現在4年生に在学し、感染症疫学研究を行っています。今村先生は大変おおらかな先生ですが、元厚生医官のご経歴通り、幅広い情報収集と適格な分析をなさいます。

 また講師の赤羽学先生は丹念で繊細かつ抜群の語学力でひたむきに研究をなさる方です。このような先生方に直接ご指導いただき、おかげさまで順調に研究生活を送っています。高校を卒業して大学入学と同時に勉学への意欲が失せてしまったのですが、今ではトップジャーナルに掲載されることを夢見て、毎晩2時、3時と夜更かしをしています。



 三つ目は出雲医師会会員として地域医療ITの調整役をさせていただいている点です。

 1999年、島根県立中央病院に国内初の電子カルテが導入されて以来、出雲地域では様々な医療ITの取り組みがなされています。

 私の参加は2002年に経産省が実施した地域医療ネットワーク事業からです。地元ベンダーさんとともに診療所電子カルテの基本設計と地域医療ネットワークの「医療ネットしまね」の構築に携わりました。その後、「医療ネットしまね」のコンテンツとしてのASP型特定健診システム、レセプトオンラインシステムを開発しました。

 2009年には出雲医師会として厚労省の社会保障カード実証事業に参加しました。これは地域医療ITから一歩抜け出て、国の実証実験に参加できる貴重な経験となりました。
 さらに昨秋は、総務省の公募事業地域雇用創造ICT絆プロジェクトに採択され、出雲における「医薬連携」「調剤薬局サーベイランス」の構築がちょうど終了したところです。このプロジェクトは今後4年間運用してまいります。
 現在は 同じく総務省の「健康情報活用基盤実証事業」に採択され、お隣の大田市とわが出雲市での、共通診察券を用いた処方箋の電子化を含めた地域医療連携を構築の最中です。


 これまでの実証実験では、技術論の確立だけで許された面もあります。しかし、今後は地域医療再生基金等での実運用も念頭に置いていますので、コスト論としても、限られた資金で継続的な事業が成り立つように厳しく運用をチッェクする必要も出てまいりました。

 また東日本大震災では薬歴、病歴等がもしわかれば、被災地での救護活動がより行いやすかったと考えられますので、非常時にも役立てる医療インフラも方向性の一つにしたいと思います。

 私は「地域医療 = 生活密着医療」と考え、日々の診療のほかに、こうした活動を通して地域の方の生活に貢献できる医療の進化を推進することをモットーとしています。



 このブログでは、その時々に診療、経営、事業、研究で経験したこと、感じたことをご披露したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。