我が家の小さな庭につわぶきの花が咲きました。

 地面にある厚い大きな葉の間から、すっと茎が伸び、その先に黄色い花が集まり小ぶりのボールのようになっています。きれいです。
 つわぶきは島根県にとって大切な花です。医師である文豪・森鴎外の出身地である津和野町は島根県の西部にありますが、その地名の由来は「つわぶきの生い茂る野」だそうです。
 個別の花が集合体として一つの造形となる様子は、私が思い描いている多施設同士をリンクする医療ネットワークのイメージと重ります。

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 さて、今回のテーマは前回からの続きで、出雲で実施している「症候群サーベイランス」についてです。

 私たち出雲医師会は、国立感染症研究所感染症情報センターの症候群サーベイランスの開発に参加させていただきました。



 1つは、2006年に医療機関の電子カルテから抽出された患者数に基づく、「外来症候群サーベイランス」です。

 これは電子カルテが導入されている10医療機関の外来受診患者の症状の増減を調査するシステムです。
 例えば、発熱患者の急増が複数の医療機関で認められた場合は、インフルエンザの流行を早めに警戒することができます。地域医療のために電子カルテの二次利用を行う画期的な取り組みに参加させていただきました。



 2つ目は、2007年の「学校欠席者サーベイランス」の開発です。

 毎朝、各学校の養護教諭の先生方に、欠席児童、生徒を症状別に分類し入力していただいています。その結果を学校医、教育委員会、保健所で相互参照し、学校保健、地域医療に役立てる仕組みです。データは学校医の先生には担当される学校の欠席状況がご覧いただけるようになっています。
 学校内での感染症流行を把握することにより、医療機関を訪れる一人一人の患児に的確な診断が下され、早期の回復につながることを期待しています。

 当初は出雲市内のたった3つの学校で開始した事業ですが、現在では全国の1万5000校で運用されています(2011年10月1日現在)。
 当時、全く実績のない試みに対して、いろいろとご心配された学校の先生、教育委員会の担当の方のご理解をいただいて、スタートしたことがとても懐かしい思い出です。

 はじめの頃はドキドキしたこともありますが、その時めげずにとったアクションがここまで来たかと感慨無量です。



 この他、救急車の出動理由を患者の症状別に統計処理を行う「救急車搬送サーベイランス」も同センターで開発され、出雲消防署において全国で最初に運用されています。

 消防署では患者搬送を終了後に患者情報がシステム入力されます。このデータを用いて個人情報を省いて症状者数がモニターされます。救急車を利用する重症患者の動向を把握できるサーベイランスです。新型インフルエンザが流行した時には、重症肺炎患者による「呼吸困難」症例や、脳症による「けいれん」症例の急増の調査に役立ちました。



 さらに、同センターは「薬局サーベイランス」を開発しています。

 このサーベイランスは調剤薬局で特定の薬品の日々の処方箋発行数の増減を調査することにより、特定の感染症の流行を類推するものです。
 例えばタミフル、リレンザ、イナビルといった抗インフルエンザ薬の動向を調査することによりインフルエンザの流行状況が把握できます。しかし、出雲地区ではこれまで数件の薬局に導入されているだけでした。



 これらの症候群サーベイランスを同時に実施すると、それぞれの特徴や欠点を補完してより有効な調査が可能になると思います。
 私や出雲保健所の担当者は毎日チェックして予期せぬ感染症のアウトブレイクがないか注意を払っています。



 次回のブログでは、感染症症候群サーベイランスの具体的な成果と医療連携についてご紹介します。