医学論文を含めて研究とは、何か新しいこと、「Something new」をまとめることです。先日、思いかげず趣味の世界でそれが実現されることになりました。

 私は学生時代に大学の管弦楽団に在籍しており、その縁で2012年に「DNAフィルハーモニック」というアマチュアオーケストラを結成しました。「DNAフィルハーモニック」は医師(doctor)、看護師(nurse)、芸術家(artist)の頭文字をとって命名しました。出雲市とゆかりのある医療および看護、介護の従事者、さらに医療を学ぶ学生で音楽に携わる人たちと、日々芸術活動に携わる人たちが、毎月の練習を通して相互に有意義な影響を与え合い、芸術の研鑽を行っています。私は主にファゴットを演奏しています。

 昨年末に第3回演奏会を行い、第一部では、出雲市出身でファゴットのソリストである木村恵理氏をお迎えし、日本人作曲家の池辺晋一郎氏による現代音楽「炎の資格」を演奏しました。この曲こそ「Something new」となりました。それは、国内外のプロのオーケストラですら、初演の1回しか演奏されていなかったからです。私たちはアマチュアオーケストラとしては世界で初めて、演奏会を実現しました。

写真1

池辺晋一郎作曲 ファゴットとオーケストラのための協奏曲「炎の資格」
手前:ファゴット独奏 木村恵理


 
 ■「ファゴットが薪なら、火をつけて燃やしたらどうなる?」


 
 ファゴットという楽器の語源の一つは「薪」です。確かにファゴットは、薪を二本重ねたような形をしています。池辺晋一郎さんは「ファゴットが薪なら火をつけて燃やしたらどうなるのだろう?」というウイットからこの曲を作曲されたそうです。 

 着火を着想させるハープのピチカートで曲は始まります。すぐに3人のオーケストラのファゴット奏者と独奏のファゴット奏者の掛け合いとなり、わずかな火がメラメラと燃え上がります。そして曲は無音階、変拍子のうねりの中、メラメラと大きな炎となり、薪が尽くすと火は消え入り、最後は一本の煙となって曲が終わります。 

 第二部ではブラームス作曲の交響曲第一番を演奏しました。オーケストラの演奏会では最もポピュラーな曲で、恐らくすべてのアマチュアオーケストラが一度は演奏をしたことがあると思います。パーツの細かいところまで行き届いているのに、全体として壮大なテーマとして響くまさに名作中の名作です。

 「Something new」を試みることも想像力をかき立てられますし幾多のオーケストラが関わってきた名曲を私たちも再現することは、音楽文化の重みを感じる経験でした