日本の政府は現在、超高齢社会の到来を見据えて、在宅医療の普及に力を注いでいます。

 私は先日、自治体から往診現場の同行を依頼されました。是非 行政の方には在宅医療の現場を見ていただきたいと思っています。この時「在宅医療を進めるうえで、行政の支援として何が必要と思いますか」との質問をいただきました。そこで、当院の在宅医療を紹介するシリーズの最後は、2年間の在宅医療の経験から、今後の課題について考えてみたいと思います


■開始当初の収支がアンバランス


 在宅医療体制の構築で最初のハードルとなるのが、開始当初の収支のアンバランスさです。設備投資と人件費は高いのですが、患者数は急激には増えません。当院のブレークイーブンポイントはオープン20カ月目の現在です。
 
 患者さん1人当たり月2回診療して約50,000円/月は高点数に思われると思います。しかし、移動時間を含めると1時間当たり1名しか診療できません。医師の時給10,000円、事務員時給1000円、看護師時給2000円とすると人件費率は52%となりますが、夜間、時間外診療のための待機手当も考えると、人件費率はもっと高くなります。医師を雇用する場合、人件費は大切な視点となります。
 
 また、在宅医療でも設備は必要です。自動車、通信機器、ポータブルの検査機器(レントゲン、超音波診断装置)等が設備投資となります。
 


■医療資源を有効活用するサポートシステムが必要


 
 そのため、効率よく医療資源が使えるようなサポートがあると医療機関は大変助かります。
 
 在宅診療所では、患者さんの状況次第で受け入れ可能な人数、重症度、地域が日々変化しています。ある時は新規患者の引き受けが可能でも、別の日には末期の悪性腫瘍患者を複数抱えていてお引き受けできないことがあります。このミスマッチを解消するには、あらかじめ紹介元が在宅診療所の受け入れ状況をリアルタイムで表示できるネットワークシステムがあればいいと思います。
 
 
 医療資源の有効活用の視点は、地域全体でも必要です。個人の診療所医師の場合、軽症であれば引き受け可能でも、重症患者は引き受けられないので、結局、在宅医療を全く行わないことがあります。このために地域の在宅医療の受け皿がとても少なくなっていると感じています。いったん軽症を引き受け、重症化した場合は別の余力のある在宅診療所に引き継げる仕組みができれば、ずいぶん地域全体で在宅医療の間口が広がると思います。
 
 


■多職種がリアルタイムに情報共有したい
 


 また、在宅医療は介護との連携が欠かせず、一人の患者を多職種チームが支えます。そのため、多職種チームの情報共有が重要になりますが、現状ではケア会議のようなface to faceの場を設けるか、fax、郵送、電話しか手立てがなく、リアルタイムの情報共有がなされていません。それによって、タイムラグや連絡漏れが生じ、利用者に戸惑いを与えることが多いと思います。したがって ITを利用した多職種連携が望まれます
 
 この問題については、島根県の地域医療再生基金を用いてNPO法人しまね医療情報ネットワーク協会が、ITを利用した在宅医療支援システムを構築中です。これは島根県全体の医療介護の療養現場を、あたかも一つの病院の中で電子カルテを使うような情報共有の感覚です。