出雲の開業医「生活密着医療がモットーです」

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     地域医療 = 生活密着医療と考え、「地域の方々の生活に貢献できる医療の進化を推進する」がモットーの開業医が、診療、研究、IT事業に奮闘する日々を出雲の地から綴ります。
  • 著者プロフィール
    杉浦弘明(すぎうら ひろあき) 1965年生まれ。1991年島根医大卒。島根県出雲市に「すぎうら医院」を設立して15年目の開業医。日常診療の傍ら、研究・IT事業など多方面で活躍中、後世に残る英語論文にも挑戦している。

2013年10月

体育の日イベント・少年野球での科学的トレーニング

子供の運動神経が急激に発達する9歳から12歳は、スポーツトレーニングではゴールデンエイジといわれています。この時期にスポーツを楽しむと生涯にわたってスポーツ好きになる大切な時期です。
 
私は今、出雲市立今市小学校の学校医、「オール今市少年野球クラブ」のチームドクターとして、現代の子供たちを取り巻くスポーツ環境の厳しさを大変憂えています。子供だけでスポーツができる場所がなくなった上に、刺激的なゲームが子供たちを夢中にさせます。またこの時期は中学受験される方に とっては大切な時期です。その結果としてスポーツをしない子供が増えているのです。
 
一方、スポーツをする子供たちはスポーツ少年団等で休日をすべて運動に費やしてオーバートレーニングとなっています。中には小学生の時期からスポーツ障害を起こしてしまう子供もいます。また熱心さのあまりの指導者の過叱責がトラウマとなったり、コーチの言葉に強い精神的支配を受けてしまう子供たちもいます。それを噂に聞き、スポーツ少年団に入団させることをためらう保護者もいます。


■学校医としてスポーツ教室を開催


そこで昨年から学校医として、子供たちとスポーツを楽しむ取り組みを始めました。
プレゴールデンエイジである小学校低学年向けに学校医主催のスポーツ教室「ハッピーアスリーツ」を開催し、沢山のスポーツを経験する機会を提供しました。おかげさまで子供や保護者から大変楽しく有意義であったとご評価をいただきました。http://jmedj2.com/archives/54318177.html

この教室は2年目を迎え、今後も継続していきます。


第二弾は 4年生から6年生のスポーツ少年団で本格的に野球に取り組んでいる子供たちを対象としたものです。野球の場合、投球動作は複数の関節と筋肉を使い、大きな関節可動域を用いる大変複雑な動きです。女性の方でボールがうまく投げられない方がいらっしゃると思いますが、それはもともと難しいことだからです。しかし、子供は遊びの中で覚えてしまうことが多く、理論だった投球方法が教えられていない場合があります。この世代に正しい動作を取得すると、中学、高校以降のポストゴールデンエイジと呼ばれる筋肉、骨格が成長する時期に活躍し続けることができます。しかし間違った技術を取得してしまうと、その後に治すことはできなくなりますから大切な時期です。

少年野球の指導者の方々は、子供の時から運動神経抜群のため自ずと理想的な投球動作が身についている方が殆どです。幼い時から裸足で戸外を走り回ったりすることなど知らない現代の子供たちを教育するための指導者講習の機会があまりないのもシステム上問題です。


■グラブ職人に野球指導を仰ぐ


オール今市少年野球クラブでは、10月14日(体育の日)に、BBAグラブ工房http://www.bba.co.jp/index.htmlのグラブ職人でありながら、正しい捕球、投球方法を全国の小中高校生を指導している梅原伸宏先生(写真左の男性)に奈良県からお越しいただき、2日間にわたってご指導いただきました。

写真1

講習会の目的は、子供も親も指導者も、捕球と投球の基礎を学び、野球肘を防止して生涯野球を楽しめる子供を育てるためのものです。基礎編(下の写真)では素手でボールを扱うトレーニングを親も一緒に楽しみました。

2写真1
 
梅原先生はご自身がグラブを製作しているので、グラブを使った捕球のレクチャーは圧巻です。親指と小指、人差し指を使ってしっかり握ると、捕り損ねのエラーは減りますし、次の投球動作も大変スムーズになりました。


クライマックスは投球動作のレクチャーです。体育館で裸足になってバランスよく片足立ちをすることから始まり、左右の足の位置、体重移動、ボールの持ち上げ方、肩と肘の使い方について順序良く説明を受けました。下の写真は同社で販売している練習用スティック(なげルーン)を使ってのシーンです。キャプテンのモリト君(背番号10)が皆の代表として壇上で指導してもらいました。みんなの前で模範実技をうけるのは、照れて難しいのに彼は皆のために協力してくれ大変立派でした。

写真3

続いて、グラウンドで実際のボール使って個別指導を受けたキャッチャーのジュン君のボールが20分後には唸りをあげて相手のグラブに収まった時、子供たちの目は惹きつけられていました。


■指導に基づき「オール今市練習メソッド」を構築中


この日出雲市では3大大学駅伝大会の一つである出雲駅伝が開催され、選手たちは講習会場の今市小学校グラウンド前を走り抜けていきました。それに刺激されて梅原先生がレクチャーをアレンジしてくださり、速い走り方について教えてくださいました。それはグラウンドを皆で走るといったつらい練習を繰り返すのではなく、ゆっくりとした動作から少しずつ体に覚えこませるトレーニングでした。基礎動作が実際のプレーでどのように役立つかを子供たちにわかりやすく教えてくださるので、子供たちの集中力も持ち続けました。

今回の講習会では、指導者、保護者が基礎の教え方を全員で再確認できたことが大変有意義でした。後日、指導者勉強会を開催して、当日撮影したビデオを見て、家庭でするための練習方法やチームとしての練習方法について「オール今市練習メソッド」を作っています。

往診先でレントゲン診断が可能に

今年4月に常勤で往診担当の美川先生が赴任してくれて、機能強化型在宅療養支援診療所として往診部門を立ち上げてから6カ月が経過しました。それまでは外来の患者さんの診療の合間に往診をしてしたので、ずいぶんゆとりをもって在宅診療ができるようになりました。

在宅診療では1人の患者さんに対して、ご家族と多くのスタッフが関わります。訪問看護師さん、ケアマネージャさん、ホームヘルパーさん、薬剤師さん、理学療法士さん、入居の場合には施設の方など、多くの方々です。

患者さんの体調が急に変化した場合には、早めに連絡を入れて、ご家族を含め関係者を集めて方針を確認するようにしています。これにより患者さんの病態把握がスムーズになります。通信技術が発達してメールや携帯電話で連絡ができる時代ですが、大切なことは直接会って話し合うに限ります。一人で外来をして、さらに往診をしていた昨年までは、なかなか話し合う機会を持てなかったのですが、往診に専念する常勤医がいると、このようなミーティングを開催する余裕も出てきました。


■その場で何枚でも何カ所でも撮影できる


レントゲン
レントゲン2

 
写真は当院の往診用レントゲンシステムです。

黄色い装置はバッテリー駆動のレントゲン照射器です。ここから照射されたX線が患者さんの背部にあるフラットパネルで画像データに変換されるDR(デジタルレントゲンシステム)です。旧来型のシステムでは、フィルムが入ったカセットをいったん医院に持ち帰って現像しないと診断できませんでした。新しいシステムでは、その場で何枚でも何カ所でも撮影でき、かつレントゲン診断ができますので、患者さんの治療の上で大変ありがたい装置です。

他にも在宅医療で患者さん宅に持ち込む医療機器としては、片手で持てるほどの大きさの生化学分析装置、血液ガス装置、ポケットに入る超音波診断装置などがあります。これらは、いずれもコンパクトかつバッテリー駆動で、その場で結果が分かる検査機器として大変便利です。これらの医療機器は災害時の救援活動でも大変役立ちます。在宅医療と災害医療は出向いた先での医療という点で共通しているので、医療機器も互いに応用可能です。