2011年10月から本ブログを担当させていただき、今回で第30回目となります。
お読みいただいている皆様、どうもありがとうございます。そしていつも推敲をしてくださり、私にライティング術を教えてくださる編集部の永野さんに厚く御礼申し上げます。

先日、プロの「ビジネスコーチ」の谷益美さんと会食をする機会に恵まれました。初対面でしたがとても有意義な時間でした。

ビジネスコーチングとは、話をしやすい雰囲気や状況のなかで聞き手が「傾聴」し、時に深堀することにより、相談者自身に未来志向の問題解決に気づいていただく手法です。谷さんとお話しするうちに、無意識のうちに自らコーチングを受けており、ビジネスコーチングを医療に生かす方法に気づきました。今回はその話題です。

ビジネスコーチングを医療に生かす方法、それは問診の場です。特に外来において数分単位で次の患者さんがいらっしゃる場合など、自由にお話をしていただくと終わりが見えなくなると思い込み、すぐに検査や処方をオーダーしがちです。それにより十分な問診ができなくなってしまう状況がありました。世界的にもこの傾向を憂い、患者さん自身に病気について語ってもらうことを基にする医療NBM(Narrative-based Medicine、物語に
基づく医療)が重視されています。やはり自分の体調を一番自覚しているのは患者さん自身ですから、患者さんの話の中から病態が垣間見えてくるのですね

こうして、時間に余裕があるときに「傾聴」や掘り下げて質問する方法を診療の場で実践することにしました。 


■話を聞くことが「治療」につながる


例えばある患者さんでは、職場の人間関係で困っているという話題が出た時、深堀質問として「よろしければ先方はどのような方か教えてくださいますか」とお聞きしますと、詳しくお話しいただけました。すると、最初は硬かった表情が少し柔らかくなり、最終的に精神安定剤を処方する必要もなくお帰りになりました。患者さんの話を聞くということは「診断」のためだけではなく、病態の背景を理解しようと努力すること、そのこと自体が患者さんの精神安定につながり、結果として「治療」にもつながるということを再認識しています。

数分単位で患者さんが入れ替わるような外来では、毎回堀下げた質問をする余裕はないのですが、在宅診療の場ですと、外来よりは患者さんと会話をする時間も持てますので、大変有用だと思います