最近悲しい出来事がありました。私は8年来小学校、中学校、高校で禁煙教室をしているのですが、その中の子供の1人が20歳を過ぎて喫煙しているのを目撃してしまったのです。講義の内容を変えなければいけないのか模索しています。

一方で、厚労省を挙げての受動喫煙防止の取り組みにより、特に公共の場で禁煙が進み、喫煙しない私は煙による頭痛が減り大変喜んでいます。

しかし臨床医としては、受動喫煙防止が進むだけでは足りないと感じています。本質的には、今吸っている人が健康のために禁煙すべきだと思います。

「The New England Journal of Medicine」の本年1月24日号に大変興味深い論文が掲載されました(「21st-Century Hazards of Smoking and Benefits of Cessation in the United States」http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsa1211128)。全年齢の喫煙リスクと禁煙によるメリットが初めて検討されたのです

アブストラクトを紹介しますと、25歳から79歳の対象者22万人を喫煙者と非喫煙者の2グループに分け、10年以上フォローアップして喫煙による死亡リスクを調査しました。その結果、喫煙者の死亡確率は非喫煙者の3倍という喫煙リスクが明らかになりました。さらに、現在喫煙している方は非喫煙者に比べて10年余命が短くなります

また、禁煙のメリットも述べられており、25歳から34歳で禁煙した人は、禁煙しなかった人に比べて平均余命が10年長くなりました。これが35歳から45歳では9年、45歳から54歳では6年長くなりました。喫煙される方の中には、「5年10年の余命延長はどうでもいい」と言われる方もいるのですが、5年生存を悪性腫瘍の治療目標としている場合、これを達成したのと同じ年月なんですよね。


■「吸い続けて70歳で人生を終えていいのですか」


「The New England Journal of Medicine」にシンプルにここまで書かれているのを読んでから、禁煙の説明方法を変えました

従来は「受動喫煙防止」の観点で禁煙説明を行っていましたが、これでは吸っている方の健康を考える点で物足りなく、心にも届きにくかったと思います。しかし今は「このまま吸い続けて70歳で人生を終えていいのか」「禁煙して80年の人生を全うするのか」、この論文を引用してダイレクトに迫るようにしました
 
男性の場合、80歳であれば65歳で退職しても人生を楽しむ時間は十分にあります。70歳であれば退職後たったの5年。この時代、孫の顔も見られるかどうかもわかりません。本質的におかしいのは、危険を承知で販売され続けられていることだと思います。

今、吸っている方にはぜひ禁煙していただきたいと思います