1月に昨年執筆していた2本の論文が海外の医学雑誌でパブリッシュされました。


一つは、国立感染症研究所と私が通常診療しているすぎうら医院が共同で実施した臨床研究です。もう一つは博士研究員として在籍している奈良県立医科大学健康政策医学講座での疫学研究です。いずれも多くの先生方のご指導、スッタフの皆様のサポートと、研究に参加していただいた皆様のお陰です。この場を借りて皆様に御礼申し上げます。

■抗生物質が不要なウイルス感染症を確認

臨床研究の論文は、マイコプラズマ肺炎が流行していた2011年の秋、当院に発熱症状で来院された方の鼻汁をPCR法により検査し、原因ウイルスを調べました。
 http://www.hindawi.com/journals/bmri/2013/746053/

その結果は必ずしもマイコプラズマ肺炎の患者さんだけではなく、むしろ、その他のウイルス感染症に伴う呼吸器症状の方が多いという結果でした。

乳幼児で検出されたのは多い順にライノウイルス、この年に限り秋に流行したRSウイルス、エンテロウイルス、パラインフルエンザでした。小学生以上はマイコプラズマ肺炎、エンテロウイル、パラインフルエンザウイルス、ライノウイルスが検出されました。

マイコプラズマ肺炎についてはインフルエンザの迅速診断のように診察と同時に正確に診断することはできず、早くても2~3日を要します。したがって診察初日は聴診と問診をたよりに流行状況と照らし合わせて治療しています。そして、必要性に応じてピンポイントの抗生物質を処方します。しかし、今回の調査で抗生物質が不要なウイルス感染症が存在することを確認しました。

開業以来、すぎうら医院として臨床研究をしたいとの思いがありましたので、これで一つの念願を果たしました。


■大阪の不眠発症率が震災後は1.5倍に

疫学研究の論文は、東日本大震災の前後で東京と大阪に居住されている方の不眠の発症率がどのように変化したかを調査したプロスペクティブ(前向き)調査です。偶然、大震災当日が調査の中間日となるようなスケジュールで毎日の不眠状況を調査していました。
http://www.i-jmr.org/2013/1/e2/

その結果、震災前と比べ、震災後の不眠発症率が東京では約2倍に、大阪では約1.5倍に明らかに増加したのです。東京では本震も余震も強く、原発事故の心配もありましたので不眠発症率の増加は調査結果の解析時には予想していました。しかし、震源地から離れた大阪でも眠れない方が増えたことには驚きました。ニュースやインターネット上の動画による間接体験と阪神淡路大震災の思い出しの影響が要因として考えられます。

■論文発表は未来の患者さんのためになる

臨床医にとって最も大切なことは患者さんの回復を支えることです。さらに、その過程で学んだことや、感じた疑問からヒントを得て研究し、成果を公表することは、医師個人の研鑽のみならず未来の患者さんのためになると思います。

論文発表をすると、修正や校正についてタイトなスケジュールで編集者と英文でメールのやり取りをしなくてはいけないので生活がつらくなるのですが、出来上がることの喜びもあるので今後も続けようと思います。多くの方の読んでいただける専門誌に投稿しようと思っています。

本稿執筆時、大嵐のため出雲市では花粉と黄砂が舞い散っています。ここ数日、くしゃみ、目の痒み、のどの痛みを訴える患者さんが急増していますが、こうした症状の原因が、花粉なのか黄砂なのかウイルス感染なのかを言い当てるのは困難です。今後は、この状況を臨床的に鑑別する方法や疫学的にアプローチする方法について研究する予定です。

今年中に現在島根県で行っている医療ネットワーク「まめねっと」を英文で紹介する論文も作成しようと考えています。