出雲の開業医「生活密着医療がモットーです」

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     地域医療 = 生活密着医療と考え、「地域の方々の生活に貢献できる医療の進化を推進する」がモットーの開業医が、診療、研究、IT事業に奮闘する日々を出雲の地から綴ります。
  • 著者プロフィール
    杉浦弘明(すぎうら ひろあき) 1965年生まれ。1991年島根医大卒。島根県出雲市に「すぎうら医院」を設立して15年目の開業医。日常診療の傍ら、研究・IT事業など多方面で活躍中、後世に残る英語論文にも挑戦している。

2012年10月

航空機消火救難訓練に参加して

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10月20日、出雲空港で、大阪からの航空機が着陸に失敗し滑走路で火災が発災したとの想定で航空機消火救難訓練が実施されました。空港を管理、管轄する事務所をはじめ県内3つの消防本部、県警、県内3つのDMAT(松江日赤病院、島根大学医学部附属病院、島根県立中央病院)、島根県医師会、出雲医師会等を含めて16団体210名、救急車、消防車両等31台が参加する大規模な訓練でした。この訓練において、出雲空港の地元であり、私が所属する出雲医師会には、すぐに応援要請の一報が入ることとなっています。

訓練では、消火後に救急隊によって負傷者が救出されます。この負傷者役は一般のボランティアの方や空港職員の方が演じてくださいました。負傷の程度は島根大学医学部附属病院の山内健嗣先生により様々なシナリオが用意されていました。例えば、頭部外傷、骨盤骨折です。外傷性気胸により現場で胸腔ドレナージュが必要な場合もありました。複雑なケースとして事故によるショックで過換気発作となるも時間の経過とともに軽快したの方などもいらっしゃいました。また、外傷モデルキット(写真中央:負傷者役の大腿部の出血)が患部に付けられていて、創傷部位がわかりやすく工夫されていました。

■災害現場では上下の命令系統・横との連携が重要

救難活動において医師の役割は3つあります一つは現場指揮本部において救急隊本部と共同して指揮する役割。二つ目は負傷者のトリアージをする役割。三つ目は現場での応急処置です。

医療関係者ではない読者のために「トリアージ」をご説明しますと、通常の医療や事故では、医療機関内には傷病者の数よりも医療従事者の数が多いので、一人一人に十分に医療を行うことができます。ところが大規模な事故や災害が生じると、傷病者数が医療従事者数を上回ります。このような状況になると、治療の優先順位をつけなければなりません。この順番は色分けされており、最優先治療群(重症者)は赤色、待機的治療群(中等症群)は黄色、軽傷群は緑色、死亡された方は黒色に分けられます。これがトリアージです。 
赤色の方から順次救急搬送されますが、救急車を待つ間にトリアージされた方の応急処置も必要となります。 

このように、災害現場では医師は直ちに、救急隊、看護師、事務担当者などと医療チームを結成し、指揮、トリアージ、応急処置に分かれて連携する必要があります。しかも大災害の場合はいろいろな医師会や病院からの医療支援チームが応援に駆け付けますので、役割が重ならないようにしなければなりません。

普段、診療所医師はそれぞれ個別の医療機関に勤務しており、他医療機関の方と訓練をする機会はめったにありません。しかし災害現場では、上下の命令系統、横との連携に注意を払わないとスキルを発揮できないことがあるということを今回の訓練で学ぶことができ、非常に重要な機会でした。

西嶋先生との出会いと在宅医療の決意





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写真は、最近新たに建設した当院のミーティングルームの入り口です。
この敷地は元々、季節ごとにハナミズキやバラ、クリスマスローズが咲く大変愛着のある中庭でした。

ミーティングルームを作ったのは、来春、在宅医療に本格的に取り組みたいという意欲を持つ、若く熱意ある先生をお迎えするためです。ここで、患者さんの家族や訪問看護師さん、ケアマネさん、ホームヘルパーさんと面談することを想定しています。

在宅医療に本格的に取り組もうと考えたきっかけは、日本医事新報9月15号「いまどきこだわりクリニック探訪」に登場されていた西嶋公子先生との出会いでした。



■「もし通院できなくなったら往診に来て下さいね」にどう応えるか

今年4月、西嶋先生が当院で導入している電子カルテシステムの見学にわざわざ出雲までいらっしゃいました。
記事にも紹介されていた通り、西嶋先生は高齢化が進む東京都町田市で、地域の健康増進のプロモーターとして常に前向きに取り組まれている方です。
当院に来院された際、そのご経験をお話しいただきましたが、午前は外来、午後は往診のスタイルで一貫して地域医療を実践していらっしゃる謙虚で前向きなご様子に大変感銘をうけました。視察に同行された多くのスタッフに大変尊敬されていらっしゃることも印象的でした。

当院は、今も現役で頑張っている父の協力で年間、数名の方の看取りをしています。しかし、私は通常の外来業務に手一杯で、だんだん年老いていく地域の患者さんたちの「もし通院できなくなったら往診に来てくださいね」というご希望に、どのようにお応えしようか悩んでいました。
そんな時、西嶋先生とお会いして、在宅医療に本格的に取り組む決意ができました。

現在は、介護を理解するため、事務職員が順次、ホームヘルパーの資格を取得するなど、来年度からの新たな出発の準備に追われています。