開院以来、15年間使用していたレントゲンをデジタルレントゲンシステムにリプレースしました。
 購入した一般撮影装置の工場は地元・出雲市にあります。うれしいことに、中学時代の同級生・遠藤君が担当として作ってくれました。とても愛着があります。

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 写真は当院へ出荷時の遠藤君です。
 この工場は単なる組立工場ではなく、筐体の作成、レントゲン管球まですべて作っています。













 (1)大学、県立病院、医師会、自治体、そして薬剤師会が「地域医療IT」を検討

 さて、今回は感染症症候群サーベイランスの具体的な成果と医療連携についてご紹介します。
 
 島根大学医学部、島根県立中央病院、出雲医師会、出雲市は2009年に厚生労働省の社会保障カード実証事業に参加しました。
 その時、結成されたコンソーシアムに新たに薬剤師会にもご参加いただき、今後の患者さんのためになる地域医療ITの取り組みの検討会を定期的に開催しています。

 図に示しますように、縦軸は「開発・実証実験か、実運用であるか」の視点、横軸は「地域医療連携としてのEHR(Electronic Health Record)か、個人が医療記録を閲覧利用するPHR (Personal Health Record)であるか」の視点に分けて議論しています。

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 夢を含めて将来構想を掲げ、可能なものから実証実験を行い、有効性が確認されたら実運用へとつなげています。

 今、出雲において「EHR」として運用中のシステムは、紹介状システム電子カルテ情報の提供などの基本的なものと、島根県全域運用ではASP型特定健診システムレセプト電算化オンライン化システムです。
 これらのシステムはすべて私どもで開発してきたもので、パッケージ商品を購入して運用しているものは(今のところ)ありません。

 これまでトライアルとして行った「PHR」は厚生労働省の社会保障カード実証事業です。
 また、医療情報の2次的な利用方法として、前回のブログで紹介した外来症候群サーベイランスなど新しい試みも実施しています。


 (2)地域の感染症情報をCATVのデータ放送で毎日住民に情報提供

 ワーキンググループで次の目標を「医薬連携」の実施と決めていたところ、前回のブログでご紹介した総務省の地域雇用創造ICT絆プロジェクトが昨年10月13日から公募を行いました。
 これは公共サービス、地場産業でICTを利活用し、地域の課題の解決を実現するとともに地域の雇用創出を目的としたものです。


 私たちは、憂慮すべき感染症の早期発見を行い、住民への注意喚起を呼びかけるシステム作りでプロジェクトに応募しました。
 調剤薬局にシステムを導入して「薬局サーベイランス」を行い、その結果を含めた地域の感染症情報をCATVのデータ放送で毎日住民に情報提供するものです(感染症情報告知システム)。

 さらに、調剤薬局に導入した同じPCを用いて、双方向性の医薬情報連携も構築しました。
 医療機関から薬局へはカルテ内容を、薬局から医療機関へは調剤情報を提示します。これにはジェネリック医薬品への変更情報も含まれています。


 公募が発表されてから 大急ぎで企画を取りまとめて、4医療機関・7調剤薬局での実施計画を立て、昨年11月4日に総務省に提出したところ、12月初旬に採択の通知をいただきました。

 しかし、喜んでいたのも束の間、3月31日までの約100日間で、すべて開発し、運用して報告しなければならないので、とてもハードなスケジュールとなり、多くの医師、薬剤師の先生方、企業の方、出雲市役所の方に助けていただきました。
 コンピューターシステムエンジニアさんは高校の先輩ですし、市役所の担当係長さんは高校3年間の同級生で、窮地の私を助けてもらいました。
 出雲市で医療ITのプロジェクトがまとまりやすいのは、小さな町ですから、もともと顔なじみが多いことも大切な要素だと思います。


 (3)診療所の電子カルテ内容を調剤薬局で閲覧するシステムを稼働

 出来上がったシステムは2つの要素から構成されており、すでに実運用をしています。

 1つ目は調剤薬局の処方箋情報に基づく感染症サーベイランスです。

 この結果と学校欠席者サーベイランス、外来症候群サーベイランス、救急車搬送サーベイランスの結果、さらに国の発生動向調査に基づく島根県感染症情報と実際の臨床情報を加味して、写真のように毎日住民向けにインターネットデータ放送を通じて告知しています。

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 2つ目は、診療所での電子カルテ内容を調剤薬局で閲覧していただくシステムです。

 すでに電子カルテが導入されている病院では院内処方時、薬剤師の先生方は電子カルテを閲覧しながら調剤することが可能です。
 しかし、院外の調剤薬局では、医療機関での診療情報を閲覧することは不可能だったので、今回、ここにフォーカスをおいてシステム作りをしました。

 ご利用いただいた薬剤師さんからは
 「システム導入前は、血糖降下薬が増量になった時は、『血糖値が悪くなったのですか?』と聞き出していたのが、診療情報を把握することによって『HbA1c値が6.5から6.9になったからお薬が増えたのですね』といったようにストレートに質問できるようになった
 とのご意見をいただきました。
 このほか「医療安全」「薬物治療と生活習慣に関する服薬指導の質」「患者情報・調剤情報共有による効率化」などが有効だったとご評価いただきました。

 まとめの御意見として「医療安全」「薬物治療と生活習慣に関する服薬指導の質」「患者情報・調剤情報共有による効率化」などの有効であったとご評価いただきました。



 今後、医薬連携システムヘの参加薬局が増えれば、「IT版お薬手帳」を作ることが可能です。

 この利用方法の一つに災害時の利用があります。

 先の大震災では、慢性疾患をお持ちの患者さんの場合、薬やお薬手帳が流されています。
 さらに、受診していた医療機関や薬を受け取っていた調剤薬局も機能しなくなり、お困りになった方が多数いらっしゃいます。

 もし、調剤情報がネット上に管理されており、非常時に処方調剤情報を参照することができれば、今後有用です。
 このためには、受診する病院の電源が確保され、ネットがつながっていることが前提です。
 さらに、緊急避難時の個人認証の手段としての生体認証や、避難時でも携行されやすい携帯電話を用いる工夫が必要だと思います。


 次の目標として、「電子化された処方内容」を医療機関から調剤薬局のレセプトシステムに直接リンクすることに取り組むことにしました。
 これが可能になれば調剤業務にかかわる時間が短縮され、患者さんへの利便性が高まると思います。

 現在、出雲医師会では、総務省の「健康情報活用基盤構築事業」でこのシステムについて取り組んでいますので、今後ご紹介させていただきます。