出雲の開業医「生活密着医療がモットーです」

  • ブログの紹介
     地域医療 = 生活密着医療と考え、「地域の方々の生活に貢献できる医療の進化を推進する」がモットーの開業医が、診療、研究、IT事業に奮闘する日々を出雲の地から綴ります。
  • 著者プロフィール
    杉浦弘明(すぎうら ひろあき) 1965年生まれ。1991年島根医大卒。島根県出雲市に「すぎうら医院」を設立して15年目の開業医。日常診療の傍ら、研究・IT事業など多方面で活躍中、後世に残る英語論文にも挑戦している。

マルガレッタ先生とのお茶会

 スウェーデンLUND大学家庭医療教授のマルガレッタ先生(写真1)が地元の母校島根大学医学部に講義に見えました。
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(写真1)

 僕と当院の中山医師(在宅診療部部長)が日本文化のおもてなしを計画し、出雲にある茶道の三斎流家元にて歓迎お茶会を開催いたしました。マルガレッタ先生も僕と中山医師も着物を着ました(写真2)。

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(写真2)

 茶室の中は不必要なものがなく、パチパチ音を立て静かに燃える炭火で暖められた茶釜のお湯で点てた薄茶を静かにいただきましたすべての立ち振る舞いは作法通りの揺ぎないものでありながら、むしろきわめて自然に、そして悠然に感じる所作に驚きました。接待役を忘れしばし楽しみました。勿論マルガレッタ先生にも楽しんでいただけたと思います。

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(写真3)

 お茶会の後は 出雲市内の文化文伝承館を着物姿で散策いただきました。
 お土産は当日、新品でお使いいただいた足袋と草履をお持ち帰りいただきました。

要介護者の家族になる

 大切な家族の長い病気は、それを支える家族にとって「ズシリ」と肩にのしかかり、足には「錘」となり推進力を妨げます。家族は病人のためにできるだけの労力を使い、残りの時間は、仕事・日常生活・以前から約束していたことをこなすので精一杯です。僅かな余りの時間は病気のことと、今後生活が続けられるか、不安に感じているだけで埋め尽くされてしまいます。新たな取り組みをしようという気には全くなりません。さらに悪いことに、相談相手である家族自身が病人の時は相談ができなくなります。

 学生時代に母親をすい臓がんで亡くし、一度上記の思いをしました。以来、末期がんの医療を受ける家族の気持ちや、平然とはしてはいられなくなる精神状態を体験済みですので、研修医の時から今に至るまで、がん患者さんの家族の辛さがよく分かります
 
 それから約30年。今度は、要介護者の家族になりました

 前日まで元気で歩いて、90歳を超しても医師として元気に仕事をしていた父が先日歩けなくなりました。数日まで医院の管理、レントゲン撮影、レセプト業務を几帳面にこなしていたのに、介護サービスを受けることになったのです。
 
 
■家族介護を甘く考えていた
 
 
 90歳となり持病と加齢に伴う筋力低下が進行していた最中の9月19日に、急な歩行障害、眼球運動障害が出現しました。これまで何とか自立した生活をしていましたが、今回のエピソードをきっかけに、歩行不可能となり車椅子での移動となりました。また、ベッドから車椅子への移乗、排泄動作にも介助が必要な状態です。幸いにも頭脳は明晰です。ここ数日のリハビリで回復傾向にあります。
 
 私は最初の2日間介護をしました。歩行できず、立位が保てないので 車椅子による移動、通院(検査)、入浴、更衣、食事・内服準備といった介護が必要です。必要時にすればいいのではなく、日常動作に介護が必要なので、常にスタンバイ状態です。もっと家族介護を甘く考えていました

 いつもは医療・介護福祉サービス提供者ですが、実際に医療・介護福祉サービス受給者側に立つ経験は本当に貴重で臨床に役立ちます。また、それぞれのご家庭の介護者が大変な思いをしておられることがよく分かりました


個別指導と電子カルテ

 先週、中国四国厚生局の個別指導を受けましたので、その準備と実際について書きます。


■地方厚生局からの通知


 当院「すぎうら医院」は、一般外来に加えて在宅診療を行っています。一昨年、おそらく高点数を理由に集団的個別指導を受けていました。その後、在宅診療での看取りが評価され、厚生局から「在宅緩和ケア充実診療所」に認められましたが、これにより当院の在宅診療はさらに高点数となりました。そして、訪問診療の需要に対応して、午後の外来診療を行わず訪問診療をするようになったところ、ひと月の患者数が減り総診療報酬が増えたので1人当たりの平均点数が高くなり個別指導の対象となることは避けられなくなっていました。
 
 ついに、8月に厚生局から個別指導の案内が書留封筒で届きました。予想していたとはいえ、先々の不安を感じ動揺しました。その一方で、新規個別指導の時から20年以上指導を受けておらず、在宅診療を本格的に行っている当院の保険診療の方向性が当局の意向とマッチしているのかを確認したい気持ちもありました。
 
 通達到着後、院内掲示物と事務的な提出物の確認をしました。
 
 
■1週間前の指導患者リストと医師のできる準備
 
 
 個別指導の1週間前の朝9時に20名、前日に10名の患者リストがfaxにて送付されました。在宅診療分と外来分の割合は半々でした。レセプトこそが当院の診療状況を判断する最優先資料と考え、最初にリストに載った患者さんの過去1年分のレセプトを全て印刷して縦覧ました。
 
 私が行った事前準備は以下の通りです。

通知には患者さんの氏名しか記載されておらず、どの月が個別指導の対象か分かりません。ただ、初診患者さんはある特定の月しかありませんでしたので、自ずと「この月と、その翌月であろう」という傾向が見えてきました

② 当院では電子カルテを使用していますで、カルテ確定後の変更には修正日時が入ります。したがって準備としてできることは、カルテを見直して、レセプト項目から推察される内容がカルテのどこに書いてあるかを確認し、個別指導当日にスムーズに説明できるようにしておくことです。

③ 電子カルテをpdfで印刷して紙媒体を会場へ持参しようとしたのですが、初診日から20年以上経過している方もおられるため、短期間での印刷は不可能であり、当局に相談し電子カルテシステムを会場に持って行くことにしました。

④ 患者さんの画像データは電子カルテシステムとは別のPACSで管理されていますので、30人分の画像データをそれぞれDICOMビューワー付きのCDに焼き付けました。


■そして当日


 事務方の書類や事務業務フロー全般は、先方の事務官が確認されます。保険診療の担当は指導医1名と事務官1名でした。当方のシステムに先方がビデオモニターをつけて閲覧されました。基本的にはリストの順番通りで、レセプトに事前に質問事項を記入していらっしゃいました(レセプトの範囲を逸脱する質問は通常は無いと思います)。
 
 共通項目として最初に尋ねられるのは病名についてです。「肝機能障害疑い」「腎機能障害疑い」というように多数列挙するのではなく、主要な疑い病名を記載し、後はレセプト内の症状詳記として記載するように指摘されましたので、素直に従います。しかし、それで支払基金が本当に通してくださるのか、別の心配があります。レントゲン写真の供覧も求められましたので患者ごとにデータを用意しておいたので慌てずに済みました。
 
 在宅診療の患者さんに関して必ず尋ねられ、カルテの記載が確認されるのは、「在宅時医学総合管理料の同意書(印鑑付き) 」、「毎月の訪問計画のカルテ記載」、「訪問看護指示書」、在宅指導に関する管理料(自己注射、酸素療法、人工呼吸器、中心静脈、陽圧持続呼吸療法etc)の算定根拠と指示、指導事項の記載です。
 
 外来診療で聞かれるものは「特定疾患管理指導料の記載内容」、同じく「難病外来指導管理料」でした。今回、ある指導項目に対してカルテ記載漏れをしていたのが事前チェックで分かっていました。当日その指導項目のカルテ記載の有無について(やはり)問われましたが、「記載していません」と謝りました。もちろん謝って済むことではなく、その項目については1年分自主点検し対象分については返還となりました(多くの部分は毎日記載していますので、多額ではありませんでした)。
 
 
■感想
 

 患者さんと感情を交わしながら、知力、技術、体力を必要とする実臨床を保険診療として行うためには、事務作業を齟齬なく遵守の上、保険請求の根拠となるカルテ記載が必要です。保険診療は法律に基づくルールですから、感情とは別問題です。厚生局が持参される個別指導の基本資料はレセプトだけです。実際の指導はそのレセプトとカルテ記載と必要書類の突合です。もし個別指導でカルテ内容と臨床成績と患者さんの感想が審査され、良い臨床成績の場合評価されるといいのですが、ご存知のように決してそのようなことはなく、あくまで減点法です。


■電子カルテでの対応


 電子カルテ時代ですので、事務方と協力すれば診療と会計が行われたその日のうちに、レセプトに記載されるべき医療請求内容が整理できます。このうちカルテに算定の根拠となる記載が必要であると定められている事項は、医師に当日の指導等の事実確認とカルテ整理がなされる運用方法にしておくと実際の個別指導では何ら心配がいらないと思いました。

 今回、病名が多かったことと自主返還があるので、「経過観察」で済むか「(来年)再指導」となるかは微妙なところです。ただ、今回の「個別指導」は、文字通り「指導」ととらえて、今回の「指導」事項に沿って、普段の運用方法を改善し、毎回カルテ記載が正しくなるように修正したら、次回の「個別指導」では「経過観察」になるであろうと前向きな気になりました
 

■ 今回の「個別指導の」の理由は


 最後に、担当官に個別指導の理由を尋ねましだか、教えていただけませんでした